近年、患者さん側からの医療関係者に対する暴力行為が増えているらしい。
ある研究では、過去1年間に患者さんから暴言を受けた看護師さんは67%、実際に暴力を受けたのは58%にも及ぶ。
医師については、暴言を受けたのは26%、暴力は3%いるという。
看護師さんは患者さんに接する機会が多いのと、医師に男性が多いことからこのような数値になっていると思われる。
これら暴力行為の背景には、医療機関側の不手際があることも事実だが、患者さん側の過大な権利意識があることは否めない。
少しでも納得いかないことがあると、説明を求める前に、いきりたってしまう。
自分たちは客なのだから、尊重してもらってしかるべきだ、と。
モンスターピアレンツといって、教師に対して暴言や暴力行為をし、理不尽な要求をする親が問題になっている。
患者さんでいえば、モンスターペイシェンツといったところか。
医師側の対応が悪いことも大いにあるだろうから、医療側も人間教育をきちっとする必要があるとは思う。
実際に僕の周りで起こったケースというと、当直を医局で回している病院で、僕の同期が当直したときのこと。
ソセゴンという痛み止めがあって、怪我とか手術の痛みを抑えるのに有用であるが、中毒性がある。
長期に使用していると、麻薬のようにやめられなくなる。
その夜も、ソセゴン中毒と思われる患者さんが外来に来た。
カルテを見る限り、怪我が治って久しいのに、定期的にソセゴンを打ちに来ている。
明らかなソセゴン中毒である。
面倒を避けて、患者の言うとおりソセゴンを注射していた馬鹿医者の存在も悪い。
僕の同期は当然、「ソセゴンは必要なく、中毒になっている可能性があるから打てない」と説明。
ちなみにソセゴン中毒の方には、その筋の人が多い。
指をつめたときなどに良く使われるからか。その患者さんも例外ではなかったよう。
ひとしきり外来ですったもんだした挙句、自宅に帰って日本刀を持ち出し病院で大暴れ。
あわてて警察を呼んで事なきを得た、らしい(看板とかは破壊された)。
日本刀で脅されるなんて、めったにできない経験である。
僕の場合でいうと、その筋の方が指をつめたあと、傷口が化膿しないようにお薬を出していた患者さんのケース。
その患者さんは最初に来ただけで、あとは舎弟に薬を取りに来させていた。
それがしばらく続いていたのだが、僕が当直した夜にもまた舎弟が薬を取りに来た。
カルテを見ても、しばらく来ていないから状態がわからない。
漫然と薬を続けてよいのか分からず、患者さんに来てもらうよう舎弟に指示。帰ってもらった。
すると数十分後、病院にその患者さんから電話があり、てめぇこんにゃろ、なんで薬ださねぇんだ。死なすぞ。みたいなことを吼えている。
どういう風になっているか見て、薬をそのまま続けるのか、変更するのか考えたい。と説明するが、まったく怒りは収まらず。
今からそっちに乗り込んでやるからな、覚悟しろよ!と言うので、じゃ、そのときに診察しますから、お待ちしております、と電話を終えた。
いつもの通り飄々としたものである。
さてしばらく後、また舎弟のみ登場。
先生、お薬を持ってこないとワシら殺されます、お願いします。と土下座された。
優しい僕は舎弟のことを気遣い、仕方なくお薬を出してあげた。
怖い人が乗り込んでこなくてほっとしたから、では決してない。
ほんとはかなり、びびった。
そのほかにも、患者さんの治療がうまくいかなくて仕事中に拉致された医者もいるし、殴られた医者もいるし、大変である。
ある研究者は、そのような場面を想定してロールプレイしておくことや、そういう暴力行為を許さないといった毅然とした態度をとる、ということの必要性を挙げている。
ま、そりゃそうだが、患者さんが怒るのにはそれなりの理由があるのだろうし、その理由を的確に把握し、起こる前に適切に対処することがまずは必要なんだろう。
人を相手にする商売だから、いろんなことがある。
昔みたいに、「お医者様」という時代ではないから、医者も真摯に仕事し、患者さんもこちらの立場を理解してより良い関係を築いていかなきゃ。
脅したって、良い治療に結びつくわけないんだから。