blog index

re-Heart Note

リハート、それは心癒す日々。

美容内科医 服部達也 ブログ
<< 雑記 | main | ハートリークリニックのホームページについて >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | - | | - | - |
混合診療に関する判決

4年も前のことになるが、清郷伸人氏が起こした裁判について書いた。→こちらからどうぞ
ようやく最高裁の判決が出たので、結果を書いておく。


裁判の背景はこうだ。

原告である清郷伸人氏は腎臓癌を患っており、インターフェロンの注射とLAK療法(活性化自己リンパ球移入療法)を受けていた。
インターフェロンは健康保険の適応内で、LAK療法は高度先進医療に組み込まれ、自費ではあるが同時に2つの治療を受けられていた。
ところが、この治療を受けている最中に、LAK療法が高度先進医療の対象外となってしまったのだ。
そうしたところ、病院側から、今後はインターフェロンの治療代も診察代もすべて自費で払ってね、保険は使えないから・・・と言い渡されてしまったのである。

ええ、どういうこと?、と思うだろう。

ある病気の治療を健康保険を使って治療しているときに、保険で認められていない治療を受けると、なぜか健康保険で受けている治療もすべて自費で払わなくてはならないというルールがある。
健康保険の治療と、自費診療の治療を同時に受けてはならない。
これを混合診療の禁止という。

今回は、LAK療法が先進医療専門家会議で有効性が明らかでないと判断され、枠組みから外れてしまった。
そうなると、この治療法は完全に自費診療として扱われる。
保険適応の治療と同時に受けると、混合診療となってしまうのだ。
*別の病気に対して、Aという病気に対しては保険治療、Bという病気に対しては自費診療というケースならば混合診療にはならない。あくまでも同じ病名に対して、の話である。

清郷伸人氏はこれに対し、インターフェロンに関する治療だけは以前と同じように保険適応にしてくれといって裁判を起こしたのである。


2007年11月に、東京地方裁判所は原告の勝訴とした。
医療機関は、すわ混合診療に風穴が、と色めき立ったものである。
ところが、2009年9月に高裁が出した判決は、一審の判決を破棄して原告の訴えを退けるものであった。
そこで原告は上告し、今回最高裁の判決が出たのだ。

結論から言うと、最高裁は二審の判決を支持し、上告を棄却した。
つまり、混合診療の一部に対する保険支払いは認められず、原告側の敗訴ということ。


判決文から自分なりにまとめてみると、健康保険の適応となるものは、医療の質や安全性や財政的な問題を考えると、ある程度の範囲にまとめざるを得ない。
そして、保険診療の制度や医療を守るためには、保険で認められていない医療を受ける場合には、混合診療として保険の給付を認めるわけにはいかない。
これは、健保法の第86条の解釈として妥当なものである。
ということらしい。

ま、なんとなく言いたいことも分かるが(なんとなくね)、個人的には混合診療は一部認めるべきではないかと考えている。

私は医者になって呼吸器内科に入局したが、そこではいろんな癌患者に対する抗がん剤療法に携わった。
肺がんはもとより、皮膚がん、胃がん、乳がんなど手術では取れなかった癌に対する治療をおこなっていた。

ガン患者さんの治療に触れれば分かると思うが、彼ら彼女らはみんな治るために頑張っている。
抗がん剤治療だけでは5年生存率(5年後にも存命している割合)は20〜40%程度しかない(癌の種類や転移の状態による)。
本人や家族とすれば、他にも何か方法がないかと情報を集め、あの食べ物がいいと聞けば取り寄せ、あそこの温泉がいいと聞けば出かけ、すがるのである。
ごく自然、当たり前の行動だろう。
そして、まだ日本では数少ない新しい治療法があると聞き、どうやらそれで効果が出た人もいるらしいと知れば、試してみたくなるのも当然のことではないか。
効かないかもしれないけど、試せるものは何でも試してみたい。
生き続けられる可能性があるのなら賭けてみたい、と思うのは誰でもみんな思うことではないのか。
それなのに、保険では認められていない医療を受けたら、せっかく保険でやってあげてる治療代も全部自分で負担してね、なんて言い草があるだろうか。
傲慢すぎやしないだろうか。

特に、今回の原告である清郷氏の場合、もともと国が先進医療として認めていたLAK療法を受けて、それを継続したいだけなのに、いきなりとりさげて先進医療制度からはずし、もう混合診療にしちゃうもんねなんてやりかたをしたわけだから、せっかくすがって登り始めた梯子を突然はずされた清郷氏の心中を察するにやりきれなく思うのだ。

多少感傷的になりすぎているかもしれないが、今回の判決には納得できないものがあるのだ。

今回のことをきっかけにして、国は混合診療のことにもしっかり腰をすえて協議してもらいたいと思う。
議員同士で揚げ足を取り合ったり、蹴落とそうとあらを探したりしている暇があるのなら、苦しんでいる人たちのために知恵を出して欲しいものだ。

とはいえ、おそらくTPPに参加すれば、混合診療は解禁され、株式病院が乱立し、質より量の医療が展開されることになるだろうから、私の感傷も古きよき時代の遺物ということになるかもしれない。

そうならないことを願う。

| 服部達也 | 医療問題 | 16:20 | comments(8) | - |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | - | 16:20 | - | - |
コメント
 国民皆保険が、崩壊しつつありますね。
 私の患者さんで障害者の保険を持っていた方が、ある時何らかの理由でまとまったお金を手にした為に障害者の保険を取り消され 負担金3割の国保になりました。つまり障害者認定を受けるレベルの人であっても、金銭的に裕福であれば健常者と同じ扱いになるのです。このことを知り私は、当たり前のような、解せないような不思議な気持ちになりました。
| 美香 | 2011/11/01 7:52 PM |
ワタシもこの判決には不服です。
患者の利益を侵害しているように感じられ、
判決のほうに合理性がないように思えます。
| しのっぴ | 2011/11/01 11:05 PM |
>美香さん
そういう事例は結構あるみたいですね。
そもそもルールが間違っているのに、ルールにそむいているからダメ、という判決を出すことがおかしいんですよね。

>しのっぴさん
地方裁判所レベルになると、もっと訳の分からない判決が山ほどあります。
裁判官がめちゃくちゃな人のこともよくあり、偏見と独断で訳の分からない判決を出されることも普通にあります。
最高裁でも、裁判官の主義主張によって判決が変わってくるんじゃないでしょうかね。
| 服部 | 2011/11/04 3:25 PM |
はっきり行って、役所の人の好みとかもありますから。(セイホの人の場合)裁判所の方は、これは、さらにひどいことがいろいろありますね。もっと意識を高めて裁判への関心が高まらない事には改善されないと思っています。
| しのっぴ | 2011/11/04 10:05 PM |
>しのっぴさん
その通りですね。
それと、裁判官の心理テストというか適性検査をこまめにおこなってほしいもんです。
あきらかにおかしい人とかいますから。
役所の窓口の人とかもね。
| 服部 | 2011/11/05 1:33 PM |
始めまして、混合診療について検索を掛けた所先生のブログにたどり着きました。混合診療については法的根拠が無く、医師会、厚生労働省、患者の会等その是非ついては賛否両論の論議が繰り広げられていますが単純ではなさそうです。清郷氏の事で少し気になったのですが、現在もLAK療法を継続していると聞いていますが、インターフェロンの治療を受けている所とは別の医療機関でLAK療法を自由診療として受ければ混合診療禁止に抵触しないのではないでしょうか?
| ささき | 2012/08/22 8:36 AM |
>ささきさん
こんにちは。
wikiには、
>健康保険法第64条で保険医療機関において健康保険の診療に従事する医師は保険医でなければならないとされ、保険医療機関及び保険医療養担当規則第18条で保険医が行なう保険外診療は原則禁止されているが、保険医以外の医師が行なう保険外診療を禁止する法的根拠はない。つまり、患者としては、保険医療機関で保険診療を受けながらの別の自由診療機関で保険外診療を受けることで保険外診療も受けながら保険医療機関における保険診療により健康保険からの給付を受ける形を取ることで混合診療を受ける時と同様の恩恵を受けることが可能である

と書いてますね。
清郷氏もほかの病院で自由診療を受ければよかったのかもしれませんが、制度上の問題を指摘するためにあえて同じ病院で治療を続けているかもしれません。
逃げることよりも戦うことを選んだというふうに勝手に思っています。
| 服部 | 2012/08/23 4:35 PM |
このような裁判があったとは知りませんでした。
なんだか哀しくなる裁判ですね。生きる為の治療をしたいだけなのに。病をおして戦う力って凄まじいものですね。

私の知人も膵臓癌で、とある医療機関で抗がん剤治療と別の機関で免疫療法(自由診療)を受けています。余命半年と言われて、1年が過ぎました。
この1年間、自由診療代は・・・。抗がん剤も2種類しか認可されていないので、これが効かなくなると思うだけで・・・。免疫療法をしていたおかげで、今も生きていると思います。
この治療に辿りつくまで、色々、調べたりしましたよ。
今の癌治療は総合的な治療じゃないと生きれないように思います。負担が大きいです。

日本の医療制度の遅れをなんとか出来ないものですかね?

的を得ていないコメントですみません。
| マチル | 2012/08/25 12:28 AM |
コメントする


1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< March 2020 >>

bolg index このページの先頭へ